救命科専門医として千葉北総ドクターヘリで災害現場に出動。救命救急の現場を経て、病気になった後だけではなく普段の予防の大切さを実感しました。今後はさまざまな予防医療を提供したいと考えています。
医師の道に進もうと思ったできごとがあれば教えてください。
高校生のとき、阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件がありました。社会が混乱しているところを目の当たりにし、社会秩序を維持するために貢献できる仕事として医師を志し、琉球大学で救急科専門医を取得するために学びました。
その後ドクターヘリのフライトドクターとして災害現場に赴いて重症患者の治療にあたり、災害時に機動性を持って活動ができる医療チームDMAT(ディーマット)の隊員資格を取得。取得後に恩師の益子邦洋教授の推薦で厚生労働省に出向しました。医系技官として政策立案や危機管理、高齢化社会に対応するための地域医療構想の策定に携わりました。2014年には広島土砂災害、御嶽山噴火、エボラ出血熱疑い患者やデング熱の患者発生時の対応、2016年の伊勢志摩サミットのVIPへの医療対応の計画策定と実施など、国の政策決定と危機管理の現場を担当するという貴重な経験をさせていただきました。
フライトドクターとしてどのような経験をしましたか?
沖縄は離島が多く、脳外科や心臓外科を診ることができる医師がいない島があります。沖縄県にドクターヘリが導入されたのが2008年、私が後期研修医の時でした。宮古島・陸上自衛隊の航空機で昼夜問わず患者さまの救急搬送に携わりました。
ドクターヘリについてもっと学びたいと思い、日本医科大学千葉北総病院で研鑽をつみました。救命を扱ったドラマの舞台にもなった病院です。その後、厚生労働省に出向し、災害時の医療機関の支援、エボラ出血熱の疑い患者さまの搬送など国家の危機管理案件にも携わりました。
今後、新たに取り組みたいと思っていることがあれば教えてください。
病院ではエビデンス、厚生労働省にいたときは過去の事例にのっとって考えることが多く、思考が固定的になっている自分に危機感を抱きました。新しい発想で地域医療の貢献ができないか考え、今は事業構想大学院で事業構想を学んでいます。
今後、国民皆保険の財源が厳しくなっていくことを考えると、病気になってから治療をするのではなく、病気にならないように予防する・健康を維持し続けるということが大切になってくると思います。一人ひとりにあった保険の枠組みにとらわれない診療が必要な時代が到来すると感じています。患者様が自身の健康にもっと関心を持ち、予防・健康維持を行っていただくことの大切さをこのクリニックから地域に広めていければと思っています。
日常生活で健康を維持するためにおこなっていることを教えてください。
食事指導や運動プログラムを、個人に合わせてしっかりとおこなってくれるスポーツジムで健康管理をしています。ストレスによる体重増加から通い始めたのですが、糖質を制限したりタンパク質やビタミン、アミノ酸などの必要性を勉強したり、自分の食事内容を見直すことで食事が健康維持に重要だと改めて学びました。
インストラクターから教わったことはとてもいい経験だったので、患者さまにも提供したいと思っています。減量をしたいと思っている方や、見た目の若々しさを保ちたい方などには一緒に食生活の見直しをして、一人ひとりに合わせた食事のアドバイスをしています。
来院された患者さまに接するうえで心がけていることは?
患者さまから話をお聞きするときは、お話をしにくい空気になってしまわないように気を配っています。患者さまが話題に出さない生活背景に病気の原因になっているストレスや生活習慣があるかもしれません。出ている症状に対応するだけではなく、症状の原因になっているところを見つけて治療するように心がけています。
ご高齢の患者さまはお話をすることが好きな方も多く、診察室でも待合室でもよくお話をしていただいています。高齢者にとってはサロンのような社交的存在であることができているのではと、うれしく思っています。